◇◆ 紙面から学ぶ・・・   < NO.2>
  エネルギー 槌屋 治紀
[システム技術研究所長]
  --- 消費から活用への転換を ---
2002.1.13
朝日新聞
[私の視点]
 あなたは呼吸で、1日に1sの二酸化炭素を吐き出している。化石燃料の消費の形で排出している分はその10倍。地球上で平均すると、一人が「奴隷」10人を使って贅沢をしている計算だ。日本人は1人あたり25人、米国人は55人の奴隷を使っている。100年前なら王侯貴族のような生活を、人類はいつまで続けられるのだろうか。

 地球温暖化を防止するための気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)で、京都議定書が実行段階に入った。いよいよ、地下から化石燃料を掘り出して消費する「エネルギー狩猟型文明」から、地上で太陽光や風力など自然エネルギーを利用する「エネルギー耕作型文明」へ転換する時代になったのだ。
 それにはまず、エネルギーの利用効率をあげることで消費量を減らし、自然エネルギーで代替する社会を築くことから始めよう。カギは「エネルギー効率の高い技術」「自然エネルギーの拡大」「ライフスタイルの変革」の3つである。
効率の高い技術としては、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドカーや、水素で動く燃料電池自動車がある。必要な電力だけを送り込むインバーター制御モーターや、断熱性の高い住宅電球型蛍光灯、電力損失が約半分になるアモルファストランスも有効だ。発光ダイオードは、ビル内の誘導灯や交通信号など1年中点灯する用途に適しており、経済性もある。

 人間の頭脳を活用したサービス経済への転換も大切だ。顧客に省エネルギー対策を立案・設計し、浮いたコストから報酬を売るESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)のような仕事や、データベースを活用した電気製品の修理ビジネスレンタルすることで製品を売り切りにせず、リサイクルまで責任を追うビジネスなどがある。
 我慢を強いる必要なしにライフスタイルを転換させる方法も多くある。車を運転するとき、トランク内の無駄な荷物を減らし、スムーズな加減速とハンドル操作をする。無駄なアイドリングを止め、エンジンブレーキを活用する。こうしたエコドライブで、燃費を8〜10%向上できる。 免許の交付・更新時にこうした省エネ運転法を学習した人には、「エコドライブ・ライセンス」を交付し、公共駐車場を利用するときに優遇すればいい。
 また、電力消費の10%に達している家庭の待機電力を、電気製品の機種によってゼロあるいは0.1W以下に規制する。そうすれば、技術者の創意を刺激して、電力消費を減らす新商品開発に結びつく。

 太陽電池はすでに量産効果が表れており、累積生産量が2倍になるたびにコストが82%に低下している。政府の補助政策が効果的で、10年以内に既存電力と競り合える可能性も高い。
 米国のカリフォルニア州が、車の排ガスをなくす「ゼロエミッション車規制」に踏み切ったように、地域でも独自の目標を掲げることで、効率の高い技術と自然エネルギーの利用を促すことができる。
 公共投資の一部を新技術の普及・促進に振り向けることも考えるべきだ。こうした未来型技術の開発・普及が進めば、環境対策だけでなく、国内の総需要を増やし、雇用対策にもなる。
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